インド占星術は、インドで今も使われている星占いです。
サンスクリット語では「ジョーティシュ」(光の学問)と呼ばれます。結婚相手との相性や、式の日取りを決めるのに、今もよく使われています。
西洋占星術と同じように、12の星座と惑星を使います。ただし、星座の決め方が違うため、同じ生年月日でも西洋式とは別の星座になる人が多いのが特徴です。
この記事では、次のことを順に見ていきます。
- 西洋占星術と星座がずれるしくみ
- 自分のインド式の星座とナクシャトラの出し方(計算できます)
- 月の27のナクシャトラと、9つの星
- 日本の宿曜とのつながり
この記事のポイント
- インド式の星座は西洋式より約24度ずれていて、8割ほどの人は太陽星座が1つ前になる
- 太陽より月を重く見て、月のいる27のナクシャトラで性格や人生の時期を読む
- ナクシャトラは仏教とともに中国へ渡り、『宿曜経』として日本の宿曜の元になった
インド占星術の成り立ち
インド占星術は、インドにもともとあった月の占いに、ギリシャの占星術が合わさってできました。
- もとからあったもの:月の通り道を27に分けた「ナクシャトラ」。ヴェーダの時代の暦の本『ヴェーダーンガ・ジョーティシャ』でも、ナクシャトラで太陽や月の位置を表しています
- ギリシャから来たもの:12の星座、12のハウス、ホロスコープの図。紀元後の数世紀のあいだにギリシャの占星術が伝わり、『ヤヴァナジャータカ』(ギリシャ人の出生占い)という本にまとめられました
- その後:インドの中で独自に発展し、今の形になりました。今いちばん広く使われている流派は、古典『ブリハット・パラーシャラ・ホーラー・シャーストラ』を元にしたものです
今のインドでの使われ方
インドでは、占星術が暮らしの中で使われています。
- 結婚の相性:お見合い結婚では、2人のホロスコープをよく照らし合わせます(くわしくは下の「結婚の相性の見方」の節)
- 日取り:結婚式や引っ越しなどの日時を、星の配置で選びます(ムフールタ)
- 大学:2001年ごろ、大学の助成を担う国の委員会が、大学に占星術の学科を作る計画を出しました。反対した科学者が裁判を起こしましたが、2004年に最高裁判所は訴えを退けました
西洋占星術との違い
いちばん大きな違いは、星座の帯をどこから数えるかです。この違いで、星座が約24度ずれています。
- 西洋式:春分の日に太陽がいる点(春分点)を、おひつじ座の始まりにする
- インド式:星空の決まった星を目印にして、おひつじ座の始まりを決める
春分点は、地球の首振り運動(歳差)のせいで、星空の中を約72年に1度ずつ動いています。
3世紀ごろには、2つの帯はほぼ重なっていました。そこから少しずつ離れて、2026年には約24度ずれています。
8割ほどは太陽星座が1つ前
星座1つの幅は30度です。24度ずれると、各星座のはじめの24度ほどに太陽があった人は、インド式では1つ前の星座になります。
- 1年のうち、インド式で太陽星座が変わる日は、生まれ年によって約78〜81%(1960年・1990年・2026年の1年分を計算)
- 変わらないのは、各星座の終わりの6日ほどに生まれた人だけです
- たとえば4月1日生まれは、西洋式ではおひつじ座、インド式ではうお座です
インド式でも星座は12個で、幅も30度ずつです。へびつかい座を入れる「13星座」の話とは別のものです。
ずれの値は、どうやって決めている?
ずれの大きさ(アヤナムシャ)には、いくつもの流派があります。
- インドで最も広く使われているのは「ラヒリ」の値です。インド政府の暦改革委員会(1952年発足)がこの値を勧め、国の暦(ラーシュトリヤ・パンチャーン)に使われています
- ラヒリの値は、おとめ座の1等星スピカ(インド名チトラー)が、インド式のてんびん座の始まりに来るように決めたものです
- 2026年1月1日の値は約24度13分です。毎年約50秒(角度)ずつ増えます
この記事の計算も、ラヒリの値を使っています。
4月中ごろの新年もインド式
太陽がインド式のおひつじ座に入る日は、「メーシャ・サンクラーンティ」と呼ばれます。2026年は4月14日でした。
この日は、インドのパンジャーブ地方のヴァイサーキーや、タミル・ナードゥ州の新年など、南アジアから東南アジアに広がる「太陽の暦の新年」の元になっています。
西洋式では、太陽がおひつじ座に入るのは3月20日ごろの春分の日です。同じ「おひつじ座入り」が、3週間あまりずれています。
ナクシャトラの調べ方
生年月日を入れると、インド式の太陽の星座、月の星座、月のナクシャトラが無料で出ます。
01
太陽の星座
生年月日を入れると出ます
02
月の星座(ラーシ)
インドでは太陽より重く見ます
03
月のナクシャトラ
27の宿のどれか
- 時刻は日本時間として計算します。海外で生まれた人は、日本時間に直して入れてください
- 月は1日に約13度動くので、時刻が分からないと、月の星座やナクシャトラが決まらない日があります。そのときは、その日のうちにどこからどこへ移るかを出します
- インド占星術でいちばん大事な「ラグナ」(生まれたとき東の地平線にあった星座)は、生まれた場所と時刻が必要なため、ここでは出していません
月と27のナクシャトラ
インド占星術は、太陽より月を重く見るのが特徴です。
性格を見るときも、まず月がどのナクシャトラにいるかを見ます。生まれた時刻が分からないときは、月のいる星座を仮の「ラグナ」にして読むこともあります。
ナクシャトラとは
ナクシャトラは、月の通り道を27に等分した区切りです。
- 1つの幅は13度20分(360度÷27)
- 月はおよそ27.3日で星空をひと回りするので、1日に1つずつナクシャトラを進みます
- 中国の「二十八宿」とよく似ていて、漢訳では二十八宿と同じ名前(婁・胃・昴…)が当てられました。ただし、同じ名前でも同じ星座を指しているとは限りません
ナクシャトラは、インドの暦の大事な要素の1つでもあります。インドの暦には、日ごとの「ナクシャトラ・ティティ(月の満ち欠けの日)・曜日・ヨーガ・カラナ」の5つが必ず書かれていて、まとめてパンチャーンガ(5つの要素)と呼ばれます。
27のナクシャトラ一覧
並びは、インド式のおひつじ座0度からの順です。かっこの中は漢訳の宿の名前で、国立天文台の暦Wikiの対応表によります。
- アシュヴィニー(婁宿) 支配星:ケートゥ
- バラニー(胃宿) 支配星:金星
- クリッティカー(昴宿) 支配星:太陽
- ローヒニー(畢宿) 支配星:月
- ムリガシラー(觜宿) 支配星:火星
- アールドラー(参宿) 支配星:ラーフ
- プナルヴァス(井宿) 支配星:木星
- プシュヤ(鬼宿) 支配星:土星
- アーシュレーシャー(柳宿) 支配星:水星
- マガー(星宿) 支配星:ケートゥ
- プールヴァ・パールグニー(張宿) 支配星:金星
- ウッタラ・パールグニー(翼宿) 支配星:太陽
- ハスタ(軫宿) 支配星:月
- チトラー(角宿) 支配星:火星
- スヴァーティー(亢宿) 支配星:ラーフ
- ヴィシャーカー(氐宿) 支配星:木星
- アヌラーダー(房宿) 支配星:土星
- ジェーシュター(心宿) 支配星:水星
- ムーラ(尾宿) 支配星:ケートゥ
- プールヴァ・アーシャーダー(箕宿) 支配星:金星
- ウッタラ・アーシャーダー(斗宿) 支配星:太陽
- シュラヴァナ(女宿) 支配星:月
- ダニシュター(虚宿) 支配星:火星
- シャタビシャー(危宿) 支配星:ラーフ
- プールヴァ・バードラパダー(室宿) 支配星:木星
- ウッタラ・バードラパダー(壁宿) 支配星:土星
- レーヴァティー(奎宿) 支配星:水星
28番目の「牛宿」(アビジット)を入れて28とする数え方もあります。
9つの星とダシャー
インド占星術で使う星は9つです。まとめて「ナヴァグラハ」(9つの星)と呼びます。
- 太陽・月・水星・金星・火星・木星・土星の7つ
- ラーフとケートゥの2つ
天王星・海王星・冥王星は、ふつうは使いません。
ラーフとケートゥ
ラーフとケートゥは、実際の星ではなく、月の通り道と太陽の通り道が交わる2つの点です。日食と月食は、太陽と月がこの点の近くにあるときに起こります。
インドの神話では、ラーフは不死の薬を盗み飲みした魔物です。ヴィシュヌ神に首を切られましたが、薬を飲んでいたので死なず、頭がラーフ、体がケートゥになりました。告げ口をした太陽と月を恨み、ときどき飲み込もうとする。これが日食・月食だ、という話です。
日本では、ラーフは羅睺(らごう)、ケートゥは計都(けいと)と訳されました。7つの星に2つを足した「九曜」は、密教の星の信仰を通して日本に伝わり、家紋の「九曜紋」の名前にも残っています。
ダシャー:人生の時期の区切り
インド占星術には、人生を星ごとの時期に区切って見る「ダシャー」という見方があります。いちばんよく使われるのは、120年でひと回りする「ヴィムショッタリ・ダシャー」です。
- 9つの星が、決まった順番と年数で、順に人生を受け持ちます
- 順番は、ケートゥ7年 → 金星20年 → 太陽6年 → 月10年 → 火星7年 → ラーフ18年 → 木星16年 → 土星19年 → 水星17年(合計120年)
- 生まれたときに月がいたナクシャトラの支配星から始まります。月がそのナクシャトラをどこまで進んでいたかで、最初の時期の残りの長さが決まります
上の計算で出る「支配星」が、その人の最初のダシャーの星です。
結婚の相性の見方
インドのお見合い結婚では、2人のホロスコープを照らし合わせる「クンダリー・ミラン」がよく行われます。北インドで広く使われているのは「アシュタクータ」(8つの項目)という方法です。
- 2人の月のナクシャトラと月の星座を、8つの項目で比べます
- 項目ごとに1点から8点までの重みがあり、合計で36点満点です
- 18点以上が、結婚の話を進める目安とされています
点数だけで決めるのではなく、項目ごとの組み合わせや、ほかの星の配置もあわせて見るのがふつうです。南インドでは、10の項目で見る別の方法も使われています。
日本の宿曜との関係
ナクシャトラは、仏教とともに中国へ渡り、日本にも伝わりました。
- 759年:唐の僧・不空が『宿曜経』を漢訳しました。七曜(太陽・月と5つの惑星)・十二宮・宿の関係で、日の吉凶や生まれた人の運命を占う経典です
- 806年:空海が宿曜経を日本に持ち帰りました。のちに円仁(847年)、円珍(858年)も伝えています
- 平安〜中世:僧の「宿曜師」が、星で人の運勢や日取りを占いました。『源氏物語』の桐壺の巻にも、光源氏の将来を宿曜の名人に見てもらう場面があります
- 今:宿曜占星術や、水晶玉子さんのオリエンタル占星術の元になっています
同じ「宿」でも、出し方が違う
インドと日本の宿曜は、同じ27の宿を使いますが、宿の出し方が違います。
- インド式:生まれたときの月の実際の位置で、ナクシャトラを決める
- 日本の宿曜:生まれた日を旧暦に直し、「旧暦の各月の1日はこの宿」という表から、1日に1つずつ数えて決める
仏教に取り入れられた宿曜では、月の正確な位置を計算するかわりに、日付から1日に1宿ずつ割り当てる簡単な方法になりました。そのため、同じ人でも、インド式のナクシャトラと日本の宿曜の本命宿は、別の宿になることが多いです。
オリエンタル占星術の本命宿も、日本の宿曜と同じ旧暦の出し方で決まります(オリエンタル占星術の記事で、くわしく紹介しています)。
解明できていないこと
- ギリシャの占星術が伝わった時期:『ヤヴァナジャータカ』は、2世紀に訳され3世紀に詩の形にまとめられた、とする説が長く使われてきました。2013年には、写本を読み直して「その年代は写本に書かれていない」とする研究が出て、4〜6世紀とする見方もあります。研究者の間でも決着していません
- 古典『パラーシャラ』が書かれた時期:伝説の聖仙パラーシャラの作と伝えられていますが、はっきりした年代は分かっていません
- ナクシャトラと二十八宿の起源:インド・中国・バビロンなど、どこで生まれてどう伝わったかについていくつも説があり、今も議論が続いています
- 宿曜経の成り立ち:インドの経典を不空が訳したものという見方と、中国で書かれたものだという見方があり、専門家の意見は分かれたままです
ご存じの方は、ご意見・ご要望からぜひ教えてください。
まとめ
- 星座が約24度ずれる:インド占星術は星に合わせて星座を決めるため、春分点から数える西洋式と2026年で約24度ずれています。8割ほどの人は、太陽星座が1つ前になります
- 月が主役:太陽より月を重く見て、月のいる27のナクシャトラで性格や人生の時期(ダシャー)を読みます
- 9つの星:7つの星に、日食・月食の点であるラーフとケートゥを足して使います。日本では羅睺・計都、九曜として伝わりました
- 日本の宿曜の元:ナクシャトラは宿曜経として日本に来ました。ただし日本では、旧暦の日付から宿を出す方法に変わっています
西洋式の星の配置も見てみたい方は、ホロスコープで出生図を出してみてください。
西洋式のホロスコープで、生まれた日の星を見る
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