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夢を数字にする占い世界に広がった「夢の本」

公開 2026.10.18 読む目安 約10分

夢に出てきたものを数字に置きかえて、くじを買う。この習わしは日本だけのものではありません。イタリアや中国、タイ、ベトナム、キューバにも、昔から同じような習わしがあります。

しかも国ごとに、夢と番号の対応表まで作られてきました。

この記事では、

  • ヨーロッパの夢の本
  • 中国のくじ「花会」と、それが渡った国
  • 日本の語呂合わせ
  • なぜ夢を数字にしたのか

を、それぞれの国の資料から見ていきます。

この記事のポイント

  • 夢を番号にする表は、ヨーロッパと中国で別々に生まれた
  • 中国のくじは移民と一緒に、タイやベトナム、キューバへ渡った
  • 番号にする前から、どこにも古い夢占いの本があった

夢を数字にするとは

やり方は、どの国もよく似ています。夢に出た物や人を、表で引いて番号にします。辞書のような使い方です。

表のもとは、大きく2つあります。ヨーロッパのくじ「Lotto(ロット)」と、中国のくじ「花会(ホアホイ)」です。

夢を番号にする表の広がりの図。ヨーロッパでは16世紀のジェノヴァのLottoが広まった先で夢の本が生まれた。ナポリのスモルフィア、ヴェネツィアの1754年の夢の本、1751年からのオーストリア。ナポリの表は移民と一緒にアルゼンチンへ。中国では清の時代の花会が、中国系の移民と一緒にタイ(1835年)、ベトナム(1800年代)、フィリピン(1800年代後半)、キューバ(1847年から)、ジャマイカへ。ほかに、アメリカの夢の本、ブラジルの動物くじがある
年は、それぞれの国にくじが入った時期

ヨーロッパの夢の本

Lotto と夢

今の Lotto は、1〜90の数字から当たりの数字を引くくじです。16世紀のイタリアのジェノヴァで生まれました。議員の補充をくじで選ぶ決まりがあり、その結果に市民が賭けたのが始まりです。

このくじがイタリアの各地や外国に広まると、夢を1〜90の番号にする本が次々に出ました。

ナポリのスモルフィア

その中で、今もよく知られているのが、ナポリの「スモルフィア」です。口で伝えられてきたものが、のちに本になりました。

イタリアのロトの公式サイトも、スモルフィアの1〜90の表を載せています。

番号意味
3子猫
4豚
11小さなネズミ
47死者
48話す死者
90恐れ

同じ夢でも、中身で番号が変わります。公式サイトの例では、恋の夢は7、片思いなら29です。

イタリアからの移民が多いアルゼンチンにも、夢を0〜99にする表があり、新聞に載っています。

夢と数字を結びつけたのは

スモルフィアをだれが作ったのかは分かっていません。ユダヤ教の神秘思想カバラの、文字を数に置きかえる考え方がもとだという説が有力です。名前は、ギリシャ神話の夢の神モルペウスから来たという説があります。

中国の「花会」

36の札を当てるくじ

中国の花会は、36人の人物の名前から1つを当てるくじです。清の時代の中ごろから、福建、広東、上海、天津などで流行しました。当たると賭け金の約30倍。地域によっては、人物の代わりに動物や地名を使いました。

1916年に出た清の時代の逸話集『清稗類鈔(せいはいるいしょう)』は、上海の花会を、広州・潮州・寧波の人が始めたと書いています。

夢を札に読みかえる

花会でも、当てる手がかりにしたのは夢でした。

1933年に出た上海の随筆『上海鱗爪(しゃんはいりんそう)』には、こんな様子が書かれています。

1885年には、シンガポールの学会誌が、花会の夢の本を紹介しています。36人はそれぞれ前世が動物で、1人ずつ「この夢を見たらこの札」と書かれていました。

花会の始まり

花会がいつ始まったかは、資料によってばらばらです。明の初め、清の道光年間(1821〜1850年)の浙江、などの説があります。1885年の夢の本は、後漢の時代に発明されたと書いています。

花会が渡った国

花会は、中国系の移民と一緒に海を渡りました。1885年の論文も、マレー半島の英領の港町、ビルマ、シャム(今のタイ)など、中国の人が住みつく所ならどこでも行われていると書いています。

タイ

1835年、中国の人ホンが国王に「中国のようにくじを開けば、人々が土に埋めたお金が出てくる」と申し出て、タイで初めてのくじが開かれました。

札には、人物の絵、漢字の名前、前世の動物が描かれていました。タイの人は漢字が読めなかったので、タイ文字の ก、ข、ค……を順に振りました。そこから、このくじは「หวย ก.ข.(フアイ・コーコー)」と呼ばれます。中国では34人、タイで2人足して36人でした。

今のタイでも、夢から数字を出すのはよく知られた方法です。

昔のタイの当たりの探し方

1924年にタイの学会で読まれた論文は、当時の当たりの探し方を書いています。くじの胴元に聞く、橋のたもとの木の幹をこする、変わったお坊さんの言動を読む、などです。お坊さんが寺の壁に紙の象を飾ったので、象の札に賭けた人たちが当てた、という話もあります。

ベトナム

1800年代に中国系の移民が花会を持ちこみ、ベトナムでは「36匹の賭け(Đề 36 con)」になりました。1891年の記録は、役人も学者も商人も物乞いも、みんなこれをしていると書いています。

ここでも番号は夢から選ばれました。

今のベトナムの数字くじ「số đề(ソーデー)」は、その流れをくんでいます。35がヤギなので、好色な人を「35の血」と呼ぶ言い方まで残っています。

ほかに渡った国

同じ動物が並ぶ

シンガポール(1885年)、タイ(1924年)、キューバの表を並べると、同じ動物がいくつも出てきます。シンガポールとタイは、札の名前までよく似ています。

花会の36の札に同じ動物が並ぶ表。1885年のシンガポールの札の名前、1924年のタイの札の名前、キューバの表の番号。蝶はKun Giok、Kin Ngek、2。亀はGuat Poh、Ngouey Poh、6。雄鶏はJit San、Yit sua、11。孔雀はHong Chun、Yong Chun、13。犬はHok Sun、Hoksun、15。蛇はBan Kim、Buan kim、21。カエルはHap Hai、Ah Hai、22。ウナギはThian Liang、Thieng Lieng、26。エビはGuan Kwi、Nguan kui、30。豚はCheng Sun、Pit tit、32。猿はSam Wei、Sam Huey、34
名前のつづりは、それぞれの論文のまま

アメリカとブラジル

ヨーロッパと中国のほかにも、夢を番号にする表があります。

ブラジルの「花のくじ」

ブラジルのくじ業界のニュースサイトは、ジョゴ・ド・ビッショを考えたのは動物園の持ち主の部下だったメキシコ人で、その人がリオで開いていた「花のくじ」を動物に置きかえたものだと伝えています。中国の花会と名前は同じですが、つながりを示す資料は見つかっていません。

日本は語呂合わせ

日本にも、江戸時代から「富くじ」がありました。ただ、富くじのために夢を番号にする対応表があったという資料は、見つかりませんでした。日本で知られているのは、語呂合わせです。

落語の「御慶(ぎょけい)」では、富くじに夢中の八五郎が、梯子の上に鶴がとまっている夢を見ます。

こうして「鶴の千八百四十五番」の札を買いに行きます。表で引くのではなく、夢を言葉の音で数字に読みかえるやり方です。

推測

なぜ夢を数字に

ここからは推測です。国ごとの資料を並べると、共通する点が見えてきます。

もとは夢占いの本

夢占いの本は、くじよりずっと古くからあります。

ただ、どちらにも番号は付いていませんでした。番号を選ぶくじが入ってきたとき、中国でもヨーロッパでもアメリカでも、夢占いの本がくじの番号の本に作りかえられたように見えます。

夢はお告げ

夢を、亡くなった人や神仏からの知らせと見る考え方も共通しています。

絵で引ける

花会の札には人物と動物の絵が描かれ、字の読めない人でも選べるようになっていました。スモルフィアの本にも、同じ理由で挿絵が入っています。だれでも引けたことが、広まった理由の一つかもしれません。

自分の夢を数字に

自分の夢を数字にするなら、どの国の表を使うかで番号が変わります。

出たものナポリキューバベトナム
豚4327
犬―1514
ウナギ3226―
エビ―3031
死者478―

ベトナムは、昔の「36匹の賭け」と、その後の「40匹の賭け」の番号です。同じ豚の夢でも、4にも32にも7にもなります。どの表を使うかは、自分の好みで選んでかまいません。

イタリアのロトの公式サイトは、夢と番号に当たりやすさとの関係はなく、番号選びを楽しむための道具だと書いています。

番号にする前に、夢そのものが気になることもあります。同じ夢をくり返し見る、内容が頭から離れない。そんなときは、数字よりも夢の意味を知りたくなるかもしれません。

まとめ

夢の数字のほかに、自分だけの数字も持ってみたい人は、生年月日から出る九星気学の本命星を見てみてください。

夢のほかに、生年月日から自分の数字を出す(九星気学)

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